若き店主と囚われの薔薇


「…そうよ。薔薇の宝石、インカローズ。クエイト様がつけて下さった名前なの」


美しい、宝石だった。

彼は私の髪を撫でながら、目を細めて。

私の赤い瞳を見つめると、『君は美しいね』と呟く。

真っ赤な美しいインカローズの名前を、彼は私に与えてくれた。

大切な、大切な名前だ。

私にとって『赤』は、彼と私をつなぐ、大切な色だ。


「…そうか」


私の返事を聞くと、彼はそれきり黙ってしまう。

私は首を傾げながらも、隣にいるエリーと話を続けた。





それから三日後、私が奴隷屋での生活に慣れて来た頃。

空が暗くなってくる頃にやってきたその客は、はっきり言って最悪だった。


「手頃な子供が、ひとり欲しい」


そう言って、店へ入ってきたのは老紳士。

深くシワの刻まれた眉間と、長い白髭がなんとも恐ろしくて、私や子供達を震えさせた。


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