若き店主と囚われの薔薇
「…そうよ。薔薇の宝石、インカローズ。クエイト様がつけて下さった名前なの」
美しい、宝石だった。
彼は私の髪を撫でながら、目を細めて。
私の赤い瞳を見つめると、『君は美しいね』と呟く。
真っ赤な美しいインカローズの名前を、彼は私に与えてくれた。
大切な、大切な名前だ。
私にとって『赤』は、彼と私をつなぐ、大切な色だ。
「…そうか」
私の返事を聞くと、彼はそれきり黙ってしまう。
私は首を傾げながらも、隣にいるエリーと話を続けた。
*
それから三日後、私が奴隷屋での生活に慣れて来た頃。
空が暗くなってくる頃にやってきたその客は、はっきり言って最悪だった。
「手頃な子供が、ひとり欲しい」
そう言って、店へ入ってきたのは老紳士。
深くシワの刻まれた眉間と、長い白髭がなんとも恐ろしくて、私や子供達を震えさせた。