若き店主と囚われの薔薇


ギロリと睨みつけられると、それだけで逃げ出してしまいたくなる。

老紳士には、それほどの迫力があった。

「…非力そうな子供ばかりだな」

エルガが横で見守る中、私達は時間が過ぎるのを耐え忍ぶ。

…できれば、この男のお目には止まりたくないと思いながら。


「…よく働く子供がいい。できれば従順な」


そう言って老人が手を伸ばしたのは、テンだった。

テンはその大きな手に、反射的に身構えてしまう。

びくりと震えたテンの顔が恐怖に染まっているのを見ると、老人は眉を一気につりあげた。


「奴隷の分際で何を怯えてる!」


ーードン!

勢いよく、老人の手がテンを突き飛ばした。


「!!」


テント内に、緊張が走る。

地面に背中を打ち付けたテンが、顔をしかめた。



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