若き店主と囚われの薔薇
知らない男が、私達がいかに愚かな存在かを語っている。
何故お前のような男に、私達を語られなければならないのか。
さも知ったような口で、罵られなくてはならないのか。
恐ろしかった。
この薄暗い世界には、こんなにも横暴に、当然のように他人の愚かさを語る人間がいるのかと思うと、震えが止まらなかった。
「お客様」
男を止めたのは、エルガの冷静な声だった。
表情こそ、いつもの冷静沈着な彼のそれと変わらないけれど。
目が。
怒りを孕んだ、冷え切った色をしていた。
「…大事な商品を、そのように傷つけられては困ります。それ以上続けるおつもりでしたら、早急に帰っていただきますが」
エルガが、睨む。
老人は眉を寄せて、「私に意見するのか」と言ったけれど。
「…お客様」
今度こそ怒気を含んだ声に、老人が怯む。
一度舌打ちをして、老人はテントを出て行った。