若き店主と囚われの薔薇
私は、私の行動を決めてくれるひとが欲しくて、無意識にエルガにすがっていた。
彼に言われて、初めて気づいた。
情けなくて、苦しくて。
喉の奥が痛くなって、涙が出た。
クエイト様、今あなたはどうしていらっしゃるの。
あなたが愛したあなたの薔薇は、あなたのもとでしか咲けないのに。
どうして、こんなことになってしまったの。
私は、クエイト様のもとで生き、死んでいきたかったのに。
どうか、私を迎えに来て。
もう一度、その腕で抱きしめて。
「ーー何してる?」
突然、すぐ近くから声がした。
右を見ると、そこにはエルガがいて。
その左手に、長方形の革鞄を持っていた。
「……なんでもないわ。目が覚めただけ」
だから気にしないで、と。
手の甲で、頬に垂れた涙を拭う。
エルガを見ずに前を向いていたのに、彼はその場から動かなかった。