若き店主と囚われの薔薇
「…お前には今、何もない。どう動こうと、誰にも咎められない。だからこそ、お前の意志を全うしろ。望みを叶えるために、お前のために、生きていいんだよ」
「…私の…ために?」
「主人のために生きたいというのがお前の望みなら、そうすればいい。それは、お前がお前の望みのために、生きることになるんじゃないのか」
…考えたこと、なかった。
私が、私のために生きるなんて。
クエイトのために生きることは、私のために生きることでもある。
…けれど、怖い。
クエイトのもとへ帰れるかもわからないのに、ここで生き続けるなんて。
「無理よ、そんなの…きっと、耐えられない」
「いずれにしろ、今お前にあるのは二択だ。ここで生きるか、死ぬか。耐えて生き続ける自信がないなら、お前は今ここで死ぬのか?」
「………………」
死ぬ。
死んだ方がマシだとは思ったけれど、実際に死ぬとなると、やはり怖い。
このまま、ここで途方もなく生きていくのと、今から死ぬのは、一体どちらの方が恐ろしいのだろう。