若き店主と囚われの薔薇
「お前が生きるために奴隷になるというなら、俺はお前の寝食と身の安全を保証してやる。お前が生きるために、俺を利用しろ」
その言葉には驚いたけれど、彼の目は本気だった。
むしろ、楽しんでさえいる。
生きると決意した私の生き様を、彼は楽しみにしている。
…目の前にいるこの男は、私の道標ではないけれど。
私が生きるための道を、切り開いてくれるひとだ。
「ロジンカ」
低く、よく通る声で、彼は私の名前を呼んだ。
「俺は、怖くない」
サァ、と夜風が吹いて、私の赤毛を揺らす。
月は、私達の下に影を落とした。
「……そうね。わかった」
もう、涙は乾いた。
この世界は暗く、汚く、恐ろしいけれど。
このひとが、見守ってくれているから。
…きっと、大丈夫。