若き店主と囚われの薔薇
第二章
方法、届け屋、月夜のうた
『クエイト様にもう一度会うまで、この世界で生きていく』
そう決意してから、二ヶ月が経った。
私は毎日朝と昼と晩に一回ずつ、井戸へ水を汲みに行く。
テンやエリーと話しながら、丸太に座って客が来るのを待つ。
エルガの奴隷屋で過ごすのにも慣れ、戸惑うことも少なくなった。
数日に一度、クエイトの夢を見る。
彼との思い出だったり、言葉だったり、内容は様々だけれど。
ハッと起きて、暗いテントの中を見回す度に、私は思う。
早く、早く。
クエイトの邸へ向かうための、手段を見つけなければ。
このまま、売り物としてここで過ごすなんて、嫌だ。
生きるために奴隷となって、エルガを利用する。
そう決めたものの、じっとなんてしていられない。
私は少しずつ、確実に、気づき始めていた。
自分で探さなければ、ここに私の望む機会は巡ってこないのだと。