若き店主と囚われの薔薇
「依頼が来るのは、多種多様な立場の人間。どんな辺境でも『届ける』ために赴く彼らには、自ずと膨大な量の情報が入ってくる」
…エルガに、封筒を渡しに来る。
それだけで、ここにエルガがいること、エルガが奴隷屋の店主であること、この村の位置などが、一気にわかってしまう。
しかも、エルガの現在位置を知るためにも調べが必要だから、その過程でより多くの情報を知ることになる、ということだ。
『届け屋』のことを知るたび、私のなかでひとつの可能性が浮かんでくる。
それに気づいているのだろう、エルガは私を見つめて、意味深に笑っていた。
「だから『届け屋』は、この裏の世界一の情報通だと言える。…まぁ、ほとんどが機密事項だからな。他の人間に情報を流すのは禁止だが」
それでも。
地理に詳しくなれる。
貴族達の情報が手に入る。
それだけで充分だ。
その情報源さえ、あれば。
「……………」
考え込んだ私を見て、エルガはフッと微笑んだ。
子供達は、不思議そうに私を見ている。