若き店主と囚われの薔薇
「…『届け屋』、か」
浮かんできた可能性。
けれど、そのためにはまだまだ情報が足りないな、とぼんやり思ったのだった。
*
正午までに封筒の中身を確認したエルガは、昼過ぎに「移動するぞ」と言った。
移動?
エルガの言葉に、子供達がテントの中の荷物を片付け始める。
戸惑う私に、奴隷用の簡素な布をたたみながら、エリーが声をかけてくれた。
「あのね。今からテントをたたんで、他のところへ行くんだよ」
エリーの言葉に、私は驚いた。
移動というのは、テントごと移動するということか。
別の場所に、テントを移す。
先程の封筒に、エルガにそう決意させる何かがあったのだろうか。
それから私達は、それぞれに荷物を持つと、エルガを先頭に歩き始めた。
エルガは、人通りの少ない道を選んで歩いているようだった。
驚いたのは、私達奴隷になんの枷もつけずに歩かせていることだ。
『枷はつけないのか』と尋ねると、『つけてほしいのか』と返された。
もちろんそんなわけはないので、首を横に振る。