若き店主と囚われの薔薇


他の奴隷屋の店主がどうなのかを知らない私には、そもそも比べようもないのだけれど。

そんな私にでも、この店があまり繁盛していないことくらい、この二ヶ月でわかった。

目の前を歩く、この子供達の顔ぶれが変わることは、滅多にないと言ってもいいほどだ。

私がここへ来て数日後に、婦人のもとへ去っていったウーノのような子供は、実はとても少ないのだと知った。

エルガの店を訪れる客は、毎日、二人から三人程度。

けれど、子供が気に入られて売れていくことは、ほとんどない。

私がこの店へ来てから、ここを去っていったのは、ウーノと、一週間前に売れていった男の子がひとりだけ。

それと、新入りの女の子が一人。


そんな状態でも、エルガは焦ることも、私達の食事を減らすこともしない。

それはつまり、こういうことだろうと思った。


彼にはきっと、この奴隷屋以外に稼ぎがある。


そうでないと、さすがにおかしい。

この奴隷屋を営むだけでは、いつか金は底を尽きる。

恐らく、この奴隷屋での儲けをアテにしなくても良いくらい、稼ぐことができる仕事だ。



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