若き店主と囚われの薔薇


けれど、それが何なのかは、一般知識に乏しい私には検討もつかない。

エルガ・ラルドスという男について、この二ヶ月でわかったのは、それくらいだった。






移動を始めて、二日目の夜。

私達は、森の中にテントを張っていた。


さわさわと木々が夜風に揺れる中、隣で子供達が寝息を立てている。

私はなんだか眠れなくて、そっとテントを出た。


張ったテントの前には、真っ黒でとても大きな岩が、どっしりと地面に埋まっていた。


「………」


月の明かりが辺りに落ちていて、夜だというのに視界が利く。

岩に触れると、ひんやりと冷たかった。

ひょい、と体を動かして、岩の上に座る。

顔を上へ向けると、満月が見えた。



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