若き店主と囚われの薔薇
けれど、それが何なのかは、一般知識に乏しい私には検討もつかない。
エルガ・ラルドスという男について、この二ヶ月でわかったのは、それくらいだった。
*
移動を始めて、二日目の夜。
私達は、森の中にテントを張っていた。
さわさわと木々が夜風に揺れる中、隣で子供達が寝息を立てている。
私はなんだか眠れなくて、そっとテントを出た。
張ったテントの前には、真っ黒でとても大きな岩が、どっしりと地面に埋まっていた。
「………」
月の明かりが辺りに落ちていて、夜だというのに視界が利く。
岩に触れると、ひんやりと冷たかった。
ひょい、と体を動かして、岩の上に座る。
顔を上へ向けると、満月が見えた。