若き店主と囚われの薔薇
「え、ええ……なんだか、あなたに褒められるのは変な気分ね」
「どういう意味だ」
「ああえっと、違うのよ、馬鹿にしているわけじゃないの」
気にしないで、と彼女は言う。
月明かりに照らされたその姿は、貴族に愛でられ生きていただけあって、美しかった。
ロジンカは艶やかな赤髪を揺らして、俺をまっすぐに見つめる。
髪と同じ、赤い瞳が、柔らかく細められた。
「ただ…そうね、あなたに褒められることなんて、滅多にないものだから。…嬉しかった、だけよ。ありがとう」
……彼女は最初に比べて、随分とよく笑うようになった。
あの日、『前の主人に会うまで生き延びる』と決めたときから。
案外すんなりと、彼女はこちらに対する警戒心を解いた。
子供達に馴染むのも早かった。
それを見ていると、ああこの少女はこちらが本来の姿なのかと納得した。
奴隷だという点を除けば、どこにでもいる少女だ。
…主人に囚われてでしか生きていけない、哀れな子供だ。