若き店主と囚われの薔薇


この国で、ロジンカのような赤髪は珍しい。

そのほとんどが、他国から奴隷商が見つけてきた人間ばかりだ。


炎の赤、林檎の赤、薔薇の赤。

貴族の人々は、赤毛を様々な言葉で形容し、珍しい珍しいと手を叩く。

赤毛の、特に女の赤毛は、貴族の愛妾として売れやすい。

ロジンカもその例だろう。


しかし、そうはいかない国もある。

歴史として、赤毛は珍しいだけでなく、何か悪いものを持っているというイメージが根付いている国が、実際にあるらしい。

ロジンカの生まれた国がそうだったのなら、恐らく様々な場面で馬鹿にされ、不相応な扱いを受けて来たに違いない。

その途中で奴隷商に目をつけられ、彼女の一家は離散した。

…全く外れた推測では、ないと思う。


「記憶を失って、気づいたら真っ暗な空間に横たわってた。私の周りには、なんだかすごく疲れた顔をした人達が、たくさん座ってて…今思うと、あれは奴隷屋だったのね」


ロジンカの顔は、過去を思い出して苦しんでいるというより、懐かしんでいるように感じた。

奴隷として奴隷屋にいたというのに、今彼女は不思議なほど穏やかな表情をしている。




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