若き店主と囚われの薔薇
奴隷の子供達に対する優しい態度、毎日減ることのない食事、売り物である私達に執着しないこと、など。
『捨てられた子供を保護する』。
その目的の上だと思えば、全てに納得がいった。
もちろん、エルガ自身がそう言ったわけではない。
あくまで私の憶測にすぎないけれど、この解釈がいちばんしっくりくると思った。
そして、彼は同時に宝石商でもあるから、その仕事もしなければならない。
どうやらこの奴隷屋は、宝石を売買する場所へ、その度に動かしているらしい。
恐らく、数日前にやってきた届け屋。
彼らが持ってきた封筒には、彼の次の客からの手紙が入っていたのではないか。
そして、客に場所を指定されたエルガは、今この店をその場所へ向かって移動させている…と。
あながち間違っていないと思う。
それにしても、エルガはなんて変わり者なのだろう。
生活に困った子供を助けたいのならば、孤児院に連れて行くとか、そういう手段もあるだろうに。