若き店主と囚われの薔薇
エルガと話すのをやめ、それぞれのテントへ再び戻った後、私は二ヶ月前の彼の言葉を思い出していた。
『お前ら奴隷が、何を思い、考え、どう生きるのか。俺はそれを、奴隷屋の店主として、見ているだけだ』
…もしかしたら、あの言葉が全てなのかもしれない。
彼は私達奴隷の生き様を見届けるために、この奴隷屋を営んでいるのかもしれない。
そう思うと、趣味だという表現も頷ける。
けれど、やはり悪趣味だなと思わずにはいられなかった。
*
「…ねえ、テン」
移動を始めて四日目の夜、隣で横になったテンに声をかけた。
「…なに?ロジンカちゃん」
もぞもぞと身体を動かして、テンがこちらを向く。
目があって、私達は周りの子供達を起こさないよう、小さく笑い合った。
「…いつも、こんな風に移動してるの?」
「こんな風って?」
「『届け屋』っていう人達に手紙をもらってから、ってこと」
私が答えると、テンは考えるように上を向いた。