若き店主と囚われの薔薇
「うーん、そうだね。ぼくがここに来てからは、ずっとそうだよ」
「…そう。わかったわ。ありがとう」
そう言って前を向いた私に、テンは不安げな視線を寄越してきた。
「…気になるの?『届け屋』さんのこと」
その目は、『あまり深く知らない方がいい』と言っているみたいで。
私は苦笑いをして誤魔化そうとしたけれど、いつも何かと私を気にかけてくれるこの少年に、嘘はつきたくないとも思った。
「…うん。これからどうするかは、色んなことを知った後で、決めればいいことだから」
「…やめた方がいいよ」
その言葉に驚いて、再びテンを見つめる。
テンは、苦しげに唇を噛んで私を見ていた。
…わかっているのか、テンは。
私が考えている、私の将来の可能性を。
「危ないお仕事とか、きっとたくさんあるよ。…死んじゃったら、どうするの」
「…………」
きっと私があのとき、届け屋についてエルガに説明を求めたから。
テンは、私がクエイトのもとへ帰るのを望んでいることを、知っている。