若き店主と囚われの薔薇
「…ありがとう、テン」
微かに涙を浮かべたテンの瞳が、細められる。
そしてすぐに、彼は眠りについた。
…死なない。絶対に。
あの方にもう一度会うまでは、死んでも死にきれない。
危ない仕事だというのは、わかっている。
けれど、少しでもその可能性があるのなら。
…賭けてみない手は、ないのだ。
*
次の日の晩、食事を終えた後、私はエルガのテントへ行くことにした。
何度も『届け屋』から封筒を受け取って移動しているのならば、自ずとエルガは『届け屋』の知識も多く持っていることになるだろう。
手っ取り早く、訊けばいいのだ。
無駄な迷いは必要ない。
そう考え、奴隷達のテントを出る。
薄暗い外を眺めながら、夜の澄んだ空気を吸った。
今夜は、関所の近くの森でテントを張った。
見上げれば、木々の隙間から夜空が見える。
隣のテントに明かりがついているのを確認して、私はテントの入り口に立った。