若き店主と囚われの薔薇


「…ロジンカちゃん、どうしたの?」


気にならないと言ったら、嘘になる。

翡翠を、誰かに贈られたのかもしれない。

それとも、誰かに贈ろうとしているのかもしれない。

けれど、それは私が知るべきことではない。


「…なんでもないわ。寝ましょう」


テンとエリーに、寝るよう促す。

横になってからも、私は眠れなかった。


私とエルガは、奴隷とその奴隷屋の店主で。

私は彼を、『私のために利用する』。

その条件の上で成り立っている関係なのだ。

私がエルガのことを、今以上に知る必要はない。

…わかっている。


彼から知ることができる情報を得るだけ得れば、それでいい。

情報によっては、私はここを出ていく。

それだけだ。…そのはず、だったのに。




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