若き店主と囚われの薔薇
あの満月の夜、私の歌を褒めてくれた。
エルガの優しい表情が、忘れられない。
心のどこかで、このままで終わりたくないと思っている、私が確かに存在していた。
*
謝ろう、もう一度。
そう決意して眠りについた次の朝、エルガが「今日着く」と私達に告げた。
もう五日間も歩き続けていたので、その言葉に私達は喜んだ。
それから、夜がくるまでは早かった。
…謝る。彼に、もう一度。
意図せずとも、彼の内側に立ち入ってしまったこと。
私が無断で彼のテントへ入ったことを、彼は結局咎めなかった。
あれは、彼なりの優しさだろう。
あちらから『すまない』と謝ってきたけれど、明らかに悪かったのはこちらだ。
だからこれからは、きちんと分別をつけて行動しよう。
エルガに訊くべきことをしっかりと訊いて、そして考えるのだ。
私がこれから、どうするのかを。
そして夜、私達がテントを張ったのは、また森の中だった。
海が近いのか、夜の静けさに混じって、波の音が微かに聞こえてくる。
食事も終わり、他の子供達が寝静まった頃、私はテントを出た。