若き店主と囚われの薔薇


……けれど。

私達のテントの隣に、ぽっかりと開いた空間。

そこを見ていると、胸騒ぎがするのは何故なのだろう。



今まさに、何か大事なことが起きているような気がするのは、何故なのだろう。



…今動かなければ、手遅れになる気がする。

心臓が、大きな音を立てていて。

けれど、これ以上踏み込むのも、危ない気がした。

きっとエルガは今、私達に内緒で行動しているのだろう。

宝石商の仕事をしているのかもしれない。


だってここは、目的地だ。

恐らく届け屋がエルガに渡した手紙の、送り主が指定した場所。


もしもエルガが、その送り主と会っているならば。

…それは、少なからず『届け屋』が関わっている場面だろう。


知りたい。

けれど、怖い。


テンの言っていた通りだ。

危ない仕事がきっとある。

私は本当に、それを乗り越えられるのだろうか。



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