若き店主と囚われの薔薇
あのときは、『絶対に死なない』なんて言ったけれど。
…だって私は今、こんなにも怖くなっている。
自分の知らない世界を、知るということ。
何があるのかわからない、そこに自ら飛び込む恐怖。
……怖い。
けれど、でも。
怖がっていたら、クエイトのもとへ帰ることができない。
ぎゅう、と手のひらを握りしめて、私は大きく息を吸った。
…エルガを、探そう。
怖い、怖い、怖くて仕方ない。
けれど、私は進まなければ。
意を決して、足を進める。
エルガは、どこにいるのだろうか。
もし見つからなかった場合、他の子供達が寝ているテントにしっかり戻れるよう、道を覚えておかなければならない。
幸いここの森は木々が少なく、月明かりが程よく辺りに差し込んでいた。