若き店主と囚われの薔薇
私はそこで、足を止めた。
…このまま、進むかどうか。
唯一残った理性が、行ってはならないと止める。
けれど。
この機会を逃せば、私はきっと後悔する。
唇を噛んで、静まらない心臓の音を感じながら、私は震える足を動かした。
一歩、一歩、確実に。
テントのそばまでつくと、もう一度深呼吸をする。
そして私は、顔をそちらへ向けた。
…あんなにも、心を落ち着ける準備をしたにも関わらず。
目の前の光景に、私の目は大きく見開かれる。
そこにいたのは、あの宝石の入った鞄を広げるエルガと、微笑んでそれを見つめる、クエイトだった。