そう、わかった途端、笑いたくなった。

自然と笑みがこぼれてきた。

走る足にも力が沸いてくる。



僕は屋上まで逃げた彼女を捕まえた。

「な、なにするのよ!」

「あっ、ごめん。」

静かな空気が周りを包む。
ふっと、彼女の顔を見ると大粒の涙を流しながら彼女は言った。

「私のこと、可哀想な女だと思ってるんでしょ!?同情はいらないわ!もうあっちいってよ!」

彼女は大声で泣き出した。
「ごめん。けど、僕、君の事が好きなんだ。」

彼女はうるんだ瞳で僕を見た。



その瞳に涙はなかった。


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