赤いカスミソウ
―ガタッ…―


「!!」


藤咲が動いた拍子に触れた机の音に私ははっと我に返った。



「ごめっ…!!今の忘れて…っ…!!」



頬を濡らす水滴。




涙を流してしまった私はそんな姿を見られたくなくて走って廊下に飛び出そうとした。


でも藤咲は私の腕を掴み止めた。


「おい!!待てって!!」


「触らないで!!」


藤咲の手を私は勢いよく振り払った。



そして気付いた。



視界には初めて見る困惑した、傷ついた、藤咲の姿。



(っもうグチャグチャだ…!)



「ごめっ…!!お願い…っ…今の忘れて…っ…ごめんねっ…『バイバイ』!!」


「雨苗!!!」




走った。




走って




走って




―バンッ!!!―




勢い良く扉を開け、鍵を閉めた。



辿り着いたのは自分の家。



「っ…ハァ……ハァ…っ…!!!」



玄関だということも忘れてずるずると身体がぐずれ落ちた。



両親は共に仕事で家には誰もいない。



私は蹲った。


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