赤いカスミソウ
「駿先輩が悪「あ。その子が親友ちゃん?」


先輩を睨み、抗議の声を上げようとしたけどそれを知ってか知らずか(絶対知ってる)先輩は話を遮り逸らした。


いくら先輩でもそれはないだろ…


俺は内心溜め息を吐きながら、永奈さんの言葉に耳を向けた。



この後、永奈さんの言葉に声を失うなんて知らずに。






「うん!!そうだよ!!雨苗慧ちゃんっていうの!!」






え…?





嘘だろ…?





聞き間違いだよな…?





(でも聞こえて来たのは)





「初めまして!雨苗慧です。」



(忘れたくても忘れられなかった彼女の声)



「初めまして。葉山駿です。あ、そうそう、もう一人連れて来たんだ。」


「その後ろの人?」


「そ。俺のお気にの後輩なんだ、藤咲天音。永奈達と同い年だよ。」



そう先輩が言った瞬間、後ろ姿しか見えていなかった彼女が勢いよく立ち上がった。




そして眼に写ったのは




「っ……雨苗…?」




忘れたくても忘れられなかった彼女の姿だった……



「なん…で……?」




(高校最後の夏)



(あの日と同じ西日がさす頃に)



―止まった時間が進みだした―


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