赤いカスミソウ
目に映ったのは休憩時間に入ったのか、サッカー部のメンバーがグラウンドから出て水呑み場へと足を運ぶ姿。




当然藤咲もいるのだけれど…




見えたのは藤咲の笑顔。




でも見たくなかった…




その笑顔は他の女の子に向けたもの…




そしてその女の子は彼の好きな人…




「…痛っ……」




痛む胸を押さえるけど消えない痛み…




汚く、醜い歪んだ感情で胸が押し潰されそうだった……




さっきのサッカーボールにしたモノとは比べ物にならないくらいの“ソレ”は私をじわじわと浸食する。




「…藤…咲…っ……」




赤い夕日の差し込む教室で私は自分の感情に耐え切れなくなって小さな声で名前を読んだ…




「……っ…!」




その瞬間、藤咲がこっちへと視線を移した。



グラウンドにいる藤咲から3階の教室いる私は見えるはずがないのに、何故か逸らされない視線。




私はいつのまにか流れていた涙を拭い、慌てて本へと視線を戻し読みふけった。




今の光景を忘れるために……




この黒い感情を忘れるために……


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