赤いカスミソウ
前に一度藤咲に聞かれたことがあった。『好きな奴いる?』って。

その時はもう藤咲の好きな人は知っていたから当然私は『いない。』と答えるしかなかったんだ。

だから藤咲がそう言うのは別に変なことじゃない。



でも……



(今は聞きたくなかったっ…!!)




身体がガタガタと震える…



目の前の藤咲は止まった私をきょとんとした顔で見つめる。



「雨苗?」



ギュッと鞄を持つ手を握り締め涙を堪えた。




好きな奴…?



そんなの……!



「っ…いるよ!…好きな人……」



(言っちゃダメ。)




頭ではわかっていても、私のグチャグチャな心はついていかなかった……



藤咲は驚いた表情を浮かべた後、私の好きな笑顔を見せた。



「へぇ…いつのまに!なら今度は俺が相談のろっか…?」


「…無理だよ……」


「遠慮すんなって。」


「違う!!」


思った以上に出た大きな声に藤咲だけじゃなく、私も驚いた。



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