俺様ヤンキーに気に入られました。




「しぃ、大丈夫?」

あたしの様子に気付いたのか、麻美が話しかけてきた。

ハッと我を取り戻した時には、二人ともあたしを覗きこんでいた。


「しぃ、大丈夫。あの人はもういないけど、しぃは一人じゃないよ。」

なぜか麻美はあの人のことを話してきた。

「そうだぞ。しぃには俺と麻美もいるから。」


享ちゃんまで。そんなに辛い顔してた?

「大丈夫。大丈夫だから、もう泣かなくていいよ。」


え?泣いて………?
あ、本当だ。あたし、泣いてたんだ……。


麻美に言われて、初めて自分が泣いていることに気が付いた。

もうこれで何度目だろう。
あの人のことで泣くのは。


自覚したとたんに出てきそうになる涙を、あたしは制服の袖で拭った。

「……もう大丈夫だから、帰ろう?」

「……うん、帰ろっか。」

麻美はまだ少し心配そうな顔で言う。


「大丈夫だよ。」

もう一度呟くように言った。




家に帰ってからすぐにベッドに寝転がった。

その日あたしは、夢を見た。


忘れたくても忘れられない、あの人の夢を。


大好きだった、あの人の夢を―――…。







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