文学彼氏






〝朔は今帰宅中?〟


「うん。昇降口出たとこだけどね。
ほら、周りの声聞こえるでしょ?」



部活人のとびかう声を受話器越しに聞かせると瀬野くんは『若い人は元気だよね』と言う。


君も十分若いじゃないか。



「あれ、じゃあ…


〝あ、で。ごめん朔
土曜日バイト入ってダメになった〟



瀬野くんは今何処にいるの。

その疑問を訊く前に
瀬野くんが言葉を重ねた。


って、土曜日駄目なの?

えー…、三週間ぶりに
会えると思ったんだけどな…。


行くはずだった水族館。

その日のためにこの前友達と出かけたときに服も買ったし、なによりアシカショー楽しみにしてたのに…。



でも、そんなこと
言ったって仕方ない。




「そっかあ〜。うん、分かった」


〝ごめん、ほんと。寂しくない?〟



寂しいに決まってる。

あたしは歩く速度を落としながらトボトボ校門へ向かう。ガックリ肩を落としながらも、声だけは元気にと、無理やり弾ませる。



「大丈夫! 次行こうね」


〝…嘘つき〟


「、」





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