文学彼氏





少しだけ顔を前に覗かせる。

瀬野くんと目が合い、へへと笑った。


「瀬野くんありがとう」

「…どーいたしまして」


「あ、ちょっと照れたでしょ今!?」

「もうやだこの女子高生」


フイと背ける姿に声を上げて笑う。

私瀬野くんといるときの時間が一番好きだなあ。 幸せっていうのかは分からないけれど、お腹の辺りがねフワフワする。



「今日数学の小テストあったんでしょ。こないだ教えたとこ克服出来てた?」

「いやもう全然!」

「ほんっと教え甲斐あるよね朔は」

「はい、毎度ごめんなさい…」



例えばだけどさ、

今日みたいな事がまたどこかで起こるかもってことを想像しただけで、私なんでも頑張れる気がするよ。



だから瀬野くん、

私のこと上手に甘やかしてね。



そういう意味を込めて差し出した手を何も言わずに繋ぐキミが、限りなく大切だと思えた、ある日の帰り道。










【電話越しの声】


(瀬野くん、土曜日ほんとは水族館すっごく楽しみにしてた)
(だよね、僕も)



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