文学彼氏
「あ、次移動教室だよ!
急がなきゃっ」
まことの言葉に 急かされるように用意をし、バタバタと上履きを鳴らして教室を出た。
頭の中は瀬野くんの
暗号で埋め尽くされる。
それはコンピューター室に着いても消えなくて。それどころか 深まる一方。
瀬野くんは あたしに何て
返事をしたのだろう。
気になって授業どころではない。
「(ん゛ー。いっそ訊いちゃおうかな。や、でも…)」
「おい横田。しかめっ面してないで早よ作業しろ」
「うぁーい」
先生の注意に 渋々手を
キーボードの上に重ねる。
「(…ぁ、)」
バレないようにこっそり
スマホを出しメールを再確認。
あたしが瀬野くんに
メールを送った時刻は8時。
このとき瀬野くんは
まだ家にいたとしたら――。