文学彼氏
『あ、コウ、お前遅えーよ』
「ごめん。本屋寄ってた」
…え、何これ
事前に油引くの?!
うああ、ひかないで
具鉄板にひいちゃったよっ。
一人でワタワタしてると
私の目の前にスッ、と影が落ちた。
パッと顔を上げると、いつの間にか空席だった場所に一人の男子高校生が座っている。あ、笠井くんの友達?
『ちょ、朔!』
「あ、莉衣。ねえお好み焼きって…
『カッコよくない? あたし見た瞬間ビックリしちゃったんだけど!』
袖をツン、と引っ張り耳元で喋る莉衣は興奮気味に訴えてくるけど、今私の意識はお好み焼きにかかっているのだ。
で、だから、あの…
お、お好み焼きの焼き方…。
「ねえ、」
「っ」
「これ、そろそろ
返した方がいいんじゃない?」
「え、あ、」
お好み焼きをジッと見つめる彼は、その視線をお好み焼きから私に移す。
どこか引き込まれそうな魅力に、一瞬ドキッとした。き、綺麗な顔。