文学彼氏
ハッ!
じゃなくって!
慌ててテコを掴み
気合いでひっくり返す。
「ぎゃ、っ」
もちろん、気合いで
ひっくり返すと大抵崩れます。
「…」
もう、救いようがないという顔の彼。
「美味しければいいんです」
「そうですか」
言い訳がましくそう言うと
何食わぬ顔で彼はメニューを取った。
なんかちょっとバカにされた気分。
「すいません、海鮮塩もんじゃ一つ」
彼は即断でメニューを決め水を一口飲む。一つひとつの動作が大人に見えた。
「…お名前は」
「瀬野コウです」
「瀬野さん、綺麗な顔してますね」
「…どうも。というかテコをお好み焼きに押し付けないほうがいいと思います」
「えっ」
さっきからこれでもかってほど押し付けていた私の頬は、途端に赤くなる。
そ、そうなんだ、コレって押し付けちゃダメなんだ…。