文学彼氏
『…え? あれ? 朔を?』
困惑気味の莉衣。
あたしは口を開けたまま思考停止。
「うん」
今何が起こってるの?
下さいって私スーパーに
並んでる商品じゃないんですが。
『あっそ、うん、いいよ。
あたしもう朔の面倒見るの疲れたし』
「おおいばか」
『良かったね朔。
これで彼氏いない=年齢脱出じゃん』
あれ張本人の意見は無視?
『ちょ待てコウ。
え、なにお前そっちの線のほうだったわけ!?』
どうしてみんなどこか失礼なんだ。
瀬野さんの肩を掴みながら必死な顔で問いただす笠井くんを、彼は鬱陶しそうに振り払う。
「逆になんで興味湧かないの? 見てて面白いし、一緒に居てみたいんだけど」
『いやいやだってお前ついこの間まで勉強の邪魔になるから彼女いらないって言ってたじゃねえかよ!』
「あー言ったいった」
ワーワー会話を繰り広げる二人を前にもんじゃがグツグツと音を立てて出来上がりを知らせる。