文学彼氏
あたしは小さいテコを掴むとそれを莉衣ちゃんに差し出す。なんかまた小腹が空いてきちゃった。
「莉衣ちゃんもんじゃ食べる?」
「いやそれ瀬野くんのもんじゃ…ってか朔あんたはどうなのさ! 瀬野くんだよ!? あんた一気に勝ち組にのし上がったね!」
「え、なんで!?
あの人の家食品扱ってる会社とか!?」
「違うわドアホ!!
なんであんたの頭は
常に食しかないのよ!!」
だ、だって、勝ちとか負けとか分かんないよそんなの。私はションボリした振りをしながら、ちょこちょこもんじゃに手を出す。
「横田さん、なんなら
コレ全部食べていいよ」
「え、ホント!? ですか!?」
こ、これ全部!?
わ、っと顔で嬉しさを表すと瀬野さんはちょっと参った、とでも言いた気に眉を下げて笑う。
「なんかこの人
見てると餌付けしたくなるよね」
「瀬野くんそれみんな言うの」
「ほんと? じゃ、誰よりも美味しいの食べさせなきゃだね」
莉衣ちゃん、ごめんね。
わたし確かにお好み焼きともんじゃが美味しくて夢中になりはしたけど
さすがに分かるよ、
この人の格好良さぐらい私にも。
計算、なのかもしれないけど、
私なりの照れ隠しだと、
受け取ってもらいたい。
【昔の話】
(朔あんた今日よく食べるね)
((だって食べなきゃ間がもたないもん))