文学彼氏
「あ、雨だ」
それは本当によく出来た
タイミングに振った。
たまたま瀬野くん家に用があったのだ。
中に上がって少し話して
さあ、帰ろうと立ち上がったとき雨が降ってきた。
「ぬあー。これ止むかなあすぐに」
「んー…」
窓のガラスに手をついて
外を見る。
どんどん映る世界が濡れていく。
通り雨だといいけど…。
なんて思ったとき。
「遣らずの雨だ」
瀬野くんも窓の外を見ながら
ポツリ、そう言った。
その言葉は床に転がることなく
私がキャッチした。
「やらずのあめ…?」
「うん、そう」
お天気雨とか
キツネの嫁入りとかなら聞いたことはあるけど。