文学彼氏
先ほどまで横になって本を読んでいたせいか、髪の毛は無造作に乱れている上、白シャツの一番上のボタンが開いていた。
…あ、アンニュイ過ぎるぜ瀬野くん。
いやいやいや…今はそんなところに照れている場合ではなくって。
「うん…あー、確かにそうかもね」
「…」
さっきから頷いてばかり。
相談にもでのってあげているのかな。
そんな瀬野くんの隣に腰を掛ける。
テーブルに置いた二つの
コーヒーが白い湯気を放つ。
「こないだって、サークル同士でご飯行ったとき? ふーん、うん」
ソファの上でも体育座りをしながら、電話が終わるその瞬間を今か今かと待ち構えていた。
そのときいっぱい構ってもらお
なんて思ったとき。
〝でね…私断ったんだけどね…〟
「うん」
携帯越しに聞こえた声に
カップを持つ手が止まった。