文学彼氏
初めての経験に怖くて、恥ずかしくて、心臓が痛いほどに五月蝿くて、目の前のことでさえ考えられない。
「…っはあ」
「はあ、」
酸素を求めるように肩で息を整える。
どうしよ、こういうとき何て言えばいいのかどんな風に構えたらいいのか、全然分からない。
ある意味怯えていたのかもしれない。
「ごめん、ちょっと理性切れかけてた」
それを感じ取ったのか、瀬野くんは私の上半身を起こすと子供をあやすように身体を包み込んでくれた。
「…瀬野くんじゃ、ないみたいだった」
「うん、ごめん」
「え違う! 嫌だったわけじゃないのっ。ただ初めてだったから、ビックリして、瀬野くんなんか、ちょっとサディスティックな目だったから……」
おずおず、とそう言ったら、瀬野くんは少しバツが悪そうな顔で宙を見る。