文学彼氏
「正直……」
「うん?」
「…朔の涙目にゾクッときた」
「?!」
「とか言ってみたり」
いやいやそんなチャラけたって、ビックリはビックリだよ!!
驚きで顔を上げると
「………ほら、例えばその顔とか」
なんだか悔しそうに、自覚のない私を呆れるような表情で見下ろす瀬野くん。
「ち、ちょっと待ってて鏡持ってくる」
「ダメ。これ見ていいの僕だけ」
「なんかずるい! 」
私の顔なのに、私の知らない表情を瀬野くんは知ってるなんて!
「朔も知らない朔を知っていることが、僕の数少ない優越感だよ」
瀬野くんはそう艶やかに笑うと、私の頬にCHUとキスを落とした。
【kiss kiss kiss】
(うん? じゃあ反対に私しか知らない瀬野くんの表情もあるってこと?)