文学彼氏
辺りはかなり暗くてまるで絵の具の黒で視界が塗りつぶされているみたい。
月のあかりと外灯だけを
頼りに歩いていく。
思えば瀬野くんと出会って、
一か月が経とうとしていた。
あれからメアドを交換し
たまに会う仲にまでなった。
あの日、気恥ずかしさを必死に隠すために次々もんじゃとお好み焼きを平らげたおかげて、瀬野くんによく食べる子という印象を与えてしまった。
今日もほら、ミスド貰っちゃったし…。
なんか申し訳ない…
私、実はそこまで食べません…。
こういう認識は確実にされているのに、進展という進展は、今だにみられない。
もしかしてあたしという人間を知っていくうちに冷めてしまったのだろうか。
だとしたら、すごく悲しい。
「……」
「……」
今だってほら、会話という会話がない。
お互い黙って歩くだけ。
こんなことなら一人で
帰った方がまだマシだよ。
…ごめんなさい嘘です
怖いので大いに助かってます。
でも、不安に思う。
あたしと瀬野くんの
距離はちゃんと縮まってる?
この沈黙が気まずすぎて話をふったりもするけど、会話が中々続かなくて、結局いつも黙りこんじゃう。