文学彼氏




「楽しいです」


ぽつり、

呟かれた言葉が闇に消える。


違う

言わせても全然嬉しくない。


「…そ、うですか」


せっかく答えてくれたのに
あたしは曖昧な笑みで誤魔化した。


「横田さんは?」

「楽しい、です…」


でも…


「すごく、楽しいです」


それは本音だけど…


「だけど…ごめんなさい、

こんなんじゃ全然足りないです」



そうかすれた声で呟いた瞬間

瀬野くんに手を引かれ、足が止まる。





「僕も、全く同じこと思ってた。

全然、こんなんじゃ足りないって、」


「ーーーっ」





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