文学彼氏
それは肌寒い日の
昼下がりのことでした。
「ねーえ、瀬野くんせのくん」
「んー」
「こっち向いてみて」
「…なに」
面倒くさそうに
こちらを向いた瀬野くん。
今だ、いけ。いくのだ横田朔。
「はい、マルチーズ」
───────カシャ。
「……」
「……」
「…え、今撮った?」
「むむ?!」
予想外の声の低さに
あたしは咄嗟に首を横に振った。
これは認めたら殺されるやつだ!
「ち、違うだす。瀬野くんの後ろの観葉植物を撮ったの!」
「へえ、じゃ見せてみ」
「……瀬野くんメインに写ってるので良ければ…」
「無断許可撮影で逮捕」
「ごめんなさいっ!
かなりごめんなさい!」
そんな一枚撮ったぐらいで!
この前こっそり寝顔も
撮りましたなんて知ったら
私多分明日の太陽拝めない!