文学彼氏
駄目だ、これ以上は気になって見れない。
続きは家に帰って読もう。
そうしよう、そうしよう、と私は手でその雑誌を袋の中へ押し込めた。
…が。
すぐに瀬野くんによって袋から出され、バサッと本が開かれる。
なんていう展開。
これじゃ意味がないでしょ。
「あ、コレ美味しそう」
「っ、どれどれどれ?!」
意味がないなんて言いながらちゃっかりというか、がっつり瀬野くんの言葉に耳を傾ける自分、乙女。
「コレ」
「…」
ザッハトルテって何。
そもそもページがおかしい。
私がさっきから見ていたページは
【初めてでも作れる! 簡単チョコ】
一方瀬野くんが見ているページは
【本格的なチョコを彼に】
差の高低がヤバい。