文学彼氏
嫌われたくないのに、どうしても付きまとう恐怖と恥ずかしさと、すぐに迎えるキャパオーバーさが、こうやってストップをかけさせる。
瀬野くんは、私の手首を掴んで手を離すと、一度体勢を整える。
「朔のその言葉は何も間違ってないよ」
「でも、っ、瀬野くんと
したくないわけじゃない!」
「うん、でもまだ気持ちが追いついていないんなら、僕は待つよ」
「……」
「ていうか、止めてくれてありがとう。これじゃただ嫉妬と独占欲で抱くのと変わらなかった」
「嫉妬???」
「こっちの話」
嫉妬してたの? 瀬野くんが?!
「え、どういうこと! ちょっと詳しく!」
「黙秘で」
結局肝心なとこはだんまり。
それはあんまりだよ瀬野くん。
「ふーん…」
「なに?」
「い、いえなんでも……
(声低いって怖いって!)」
「絶対今『肝心なとこは言わねえのかよコイツ』って思ったでしょ」
「んな口悪く言ってな…うぐ、」
瀬野くんの衣服に顔をギューっと押し付けられるように抱き締められる。
なになに苦しい、うぐぐ。
手で胸を押し返すという抵抗を見せるものの、すぐにまたギューッと抱き締められる。
いや、だから苦しいって!
「ち、ちょ…」
なのに次の瞬間、
ふわっとそれが緩まったのだ。