文学彼氏
でも若葉は、そんな私の方を無遠慮にバシン、と叩いた。
叩かれた肩をさすりながら「うそだよ」と口を尖らせつつ再びボールを掻き混ぜる。
「ただ単に今日は瀬野くん大学とバイトで逢えないから」
「ふーん。てかなら家で作れば良いじゃん」
「調理器具揃ってないしうち」
「ならせめて合鍵もらってんだから今日渡せばいいのに」
「それはイヤ。
直接渡したいじゃんやっぱ」
「でも15日に渡すってどうよ…」
「どーせ瀬野くん今日
たくさん貰うだろうしいいの」
型に溶かしたチョコを流し込み
バレンタインレシピを見る。
「ちょ!!」
するといきなり若葉は
その紙を取り上げた。
さっきから何なのさもう!
「ところで朔ちゃん。最近あんたら進展あんの?」
「…進展? ないよ、とくに」
その進展がない原因はもれなく私だ。