文学彼氏
「まあだろうね! うん! ってことでそんな女として魅力がない朔ちゃんにこんな物用意してみましたあ〜!」
「ちょっとちょっと?」
どさくさに紛れてサラリとなんか貶されてなかったかいわたし。
上機嫌でポケットからハートがプリントされたボトルを取り出した若葉。
私ははその怪しいボトルを一瞥しては眉をひそめる。
「…なにそれ」
「トンキで買った! 彼氏に使ってみたらすごかったから朔にもちょっとあげる〜」
「だからこの液体なに」
「ふっふっふ。彼氏が狼になるクスリ!」
なにそれ嘘くささ120%じゃん!
「あ疑ってるでしょ。
まあ所詮トンキだからね、でも彼氏はいつもよりドキドキしたって言ってた!」
「へえー」
聞き流しながらレシピを取り返す。
えーと…次はこれをオーブンにかけて…。
「いいの? このままじゃ瀬野くん
他の女に奪われちゃうかもだよ」
「え」
「あのねえ、いつまでも瀬野くんも待ってくれるわけじゃないよ」
「っ、でも!」
こないだはちゃんと私に待つって言ってくれたもん!
「ていうか余裕ない瀬野くんとか見てみたくない??」
なんて恐ろしいことをさらっと言うんだこの人は。