文学彼氏
「(瀬野くん今何してんだろう…)」
それはふと授業中に思ったりする。
「(瀬野くんご飯
ちゃんと食べてるかなー…)」
それは私がご飯の最中に思ったりする。
「(瀬野くんも
この夕焼けを見てるかなー…)」
それは放課後に思ったりする。
あたしの頭の中はいつだって
瀬野くんを中心に回ってる。
「っ!」
だから、君のことを考えてるときに君からの着信が鳴ると、私はそれだけで幸せだ。
「もしもし!」
〝朔?〟
「うん。瀬野くん今まだ大学?」
〝や、今日講義は午前中だけだった。〟
「いーなあ。瀬野くん今日バイトもない日だよね」
瀬野くんの声は
実に二週間ぶりだったりする。
N大というかなり難解な大学に通う瀬野くんは必修科目も多く単位をたくさんとらなきゃいけないんだとか。
それに重ねバイト。
会える時間はごくわずか。
だからこそ
電話は私と瀬野くんを繋ぐ唯一の手段だったりするわけです。