今…君のために出来る事 今…君のために生きる事
「あっ…はい。」
一通りの仕事が終わったみたいで、看護士はすぐ部屋から出て行った。何となく返事してみたけど…あの人から見て、私はどんな顔してたんだろ?きっと怖い顔してたんだろうな…。…キスなんて…なんて事ない『はず』なのに…。


「ん…」
風が…頬に当たる…。心地良い感じだ…。
「あっ…。」
ベッドから部屋を覗いた時…SAEが椅子の上で眠っていた。
(本当に…いてくれた…。)
久しぶりに良く眠れた。それは…SAEのが居てくれたからだろうな…。そう感じていた。
「…す~…」
小さな吐息が聞こえる。僕は静かに起き上がって…近くにあったバスタオルをSAEの肩に掛けた。起きない様に…そっと…。
(…もうこんな時間…。)
少し眠ったつもりが…面会時間ギリギリまで寝てしまったみたいだ。点滴も新しい物に換えられてるし…。
(…あっ。)
ふと…さっき感じた風が…また頬に触れた。
(窓…開けてくれたんだ…。)
僕は…窓の方を向いた。カーテンがゆっくり揺れている…。その向こうは…夜の闇に包まれていた。街の灯りがポツポツ見える…。…綺麗だ。ここに来てから…そんな事、考える事なんてなかったな…。
(SAE…)
振り返って…また、SAEを見ていた。
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