今…君のために出来る事 今…君のために生きる事

『太郎！』
「えっ？」
誰かが…僕を呼ぶ…。それは…聞こえたって言うより…頭の中に直接…響く…そんな感じだった…。
『太郎！』
また…呼ばれた…。それは亜紀の声だった。
「亜紀！どこだよ!?」
呼び返しても…返事はない…。僕は首を傾げてしまった…。
「…なんだ!?」
そんな時…急に目の前が光って…そこだけ違う景色が見えていた…。
（あっ！）
そこに見えたもの…僕は声を出せなかった。徐々に光が広がり…景色が広がる…。そこに見えたのは…ベッドに横たわっていた…僕…。亜紀はその僕に…泣きながら声を掛けていた…。
（…これは…。）
本当に不思議だった…。今の自分自身を…冷静に理解さえ出来た。僕は…自分の体から…抜け出したって事を。でも…まだ、死んだ訳じゃない。その証拠に…あそこにいる、僕の体に付けられている機械が…まだ動いている。…これは『幽体離脱』っていうやつなのかな…？
（…このまま…死んだ方がいいのかな…。）
そう考えた時…少し体の自由が戻っていた。思うように…ってまでは動かないけど…僕の意識は部屋の外へ向かっていた。
「SAE！」
思わず声が出たけど…きっと、届いてはないだろう…。廊下には…SAEが立っていた…。とても…不安そうな顔をしてる…。…こうなるなんて…思ってもなかったろうな…。