【短編】雪と鯨とフォトグラフ

私がご飯を作ってあげる日もある。



レンタルビデオ屋で、
気になる映画を借りてきて
一緒に観たりとか。




キーボードをカチャカチャ叩いて、
一緒にレポート書いたりとか。




まるで恋人同士。

でも私達は、あくまでも隣人ってだけ。




偶然には偶然が重なるもので、
鯨と私の学部は同じだったのだ。



ちなみに基礎ゼミ(大学のクラスみたいなもの)まで同じだなんて、
奴の言葉を借りていうなら『運命』みたい。





鯨は人が良さそうな顔に、
親しみやすいキャラクターで、
おまけに根は真面目っていう、




結構モテ要素を持ち合わせている。




実際、モテないわけじゃない。



この前、基礎ゼミの子が鯨の事を熱い目で見てたし、
女の子達はやたらと鯨と喋りたがる。




もちろん私は恋人じゃないから、
それを見て文句言うわけじゃない。



だってそんなの鯨の勝手。

だけど、近頃の私は変だ。






嫉妬。

この醜い二文字が、私の心を支配している。




まるで中学生の片想い。

気がつけば、目が追いかけてしまう。




目が合えば、
歯を見せてイーッと笑う鯨。



私はバカと笑い返すけど、でもそれも上手く笑えてるか分からない。




だって、だって、鯨なんかに恋愛感情なんて持つわけないって思ってた。

ありえないって思ってたから。

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